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イタンジ CTO が語るRubyとマルチプロダクト戦略-Rubyビジネスセミナー大阪2025 レポート-


こんにちは、イタンジ CTO Office の宮永です。 

2025年2月6日に大阪で開催された Ruby ビジネスセミナーに参加してきましたので、弊社 CTO 大原の発表内容をレポートさせていただきます。

※なお、発表スライドはこちらに掲載しています。

不動産バーティカル SaaS の展開

弊社イタンジは2012年の創業以来、不動産業界の DX を推進するため、複数のSaaSプロダクトを展開してきました。最初のサービスは2015年にリリースした「ぶっかくん」という不動産会社向けの電話自動応答サービスになります。以前仲介業を行っていた我々自身が感じていたペインを解消する形で本サービスは開発され、SaaSとして提供していきました。
その後、内見予約や申込受付など、不動産業務の各プロセスを効率化するサービスを順次リリースしていきました。

これらのサービス開発においては、Rubyを一貫して活用しています。各サービスは独立して価値を提供しながらも、既存の物件情報資産を有効活用することで、サービス間のシナジーを生み出すことに成功しています。現在では4,500社以上への導入を実現し、ARR(年間経常利益)成長率は前年比+72%を記録。約62%のお客様が3プロダクト以上を利用されており、サービス間の相乗効果が事業成長の大きな推進力となっています。

モジュラモノリスへの挑戦

サービス開発の歴史を振り返ると、当初は少人数での素早いサービスリリースを重視し、モノリシックなアーキテクチャを採用していました。その後、事業の成長に伴い複数のサービスを展開する中で、一時期は完全な独立したシステムとして開発を進めていました。しかし、インフラの構築・運用の重複や、ナレッジの分散という課題に直面することとなりました。

この経験を踏まえ、現在は「モジュラモノリス」というアプローチを採用しています。Shopify が開発した packwerk を活用し、モジュール間の依存関係を適切に管理することで、独立性と共通化のバランスを取っています。これにより、各チームが独立して開発を進められる自由度を保ちながら、共通のインフラやナレッジを活用できる体制を実現しています。

各モジュールではデータベースを論理的または物理的に分割し、CI では path filter により変更箇所に依存する部分のみをビルド・テストすることで、開発効率の向上を図っています。この構成により、チーム間のコミュニケーションコストを最小限に抑えながら、スピーディーな開発を継続できています。

技術的なチャレンジ

我々はRuby を主要な開発言語として採用する中で、常に新しい技術へのチャレンジも続けています。

  • 静的型付け (RBS/Steep) の導入によるコード品質の向上

  • YJIT や jemalloc 等の活用によるパフォーマンスの最適化

  • OpenAPI や Protocol Buffers を用いたスキーマベース開発の推進

特に静的型付けの導入は、コードベースの拡大に伴う保守性の向上に大きく貢献しています。また、サービス間連携においては、同期的な処理を見直し、非同期・結果整合による疎結合化を進めることで、システム全体の柔軟性を高めています。
※静的型付けの導入は現在一部のプロダクトのみで適用しています。

今後の展望

今後は更なる事業拡大を見据え、システムの境界線を再設計し、新たな付加価値の創出を目指していきます。Ruby の進化とともにプロダクトも進化させ、事業・プロダクトの成長に合わせて組織・技術も成長させていく方針です。

また、他言語との連携も積極的に検討しており、AWS Lambda を活用した他言語実装の呼び出しや、WASM/FFI/GraalVM Native Image 等による他言語資産の活用も視野に入れています。

まとめ

Ruby というプログラミング言語は、私たちの事業成長に大きく貢献してきました。事業フェーズに応じて開発アプローチを進化させながら、常に新しい技術へのチャレンジを続けることで、プロダクトの価値を高めていくことができています。

これからも Ruby を中心としたテクノロジーの活用を通じて、不動産業界の DX を推進していきたいと考えています。引き続き、イタンジの取り組みにご注目いただければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



※本記事は 2025年2月6日に開催された Ruby ビジネスセミナー大阪での発表内容をもとに作成しています。


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